だれが書いたとも

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だれが書いたとも

二時間のあいだ、ウォード氏は医師といっしょに、探偵たちのもどりを待った。邸内には、重苦しい空気が漂って、部屋の隅々から恐怖と瘴気がゆっくりと立ち昇ってくる感じだった。おそらくは階上の書斎の空虚な壁面がにやにや笑いをつづけていることであろう。やがて、私立探偵たちがもどってきて、ご推察どおり、インクの筆をくわえた写真を村人たちに見せたところ、アレン博士にそっくりだとの返事であると報告した。ウォード氏の顔はまっ青になった。ウィレット医師はいそいでハンカチをとり出し、額の汗を拭った。アレン―ウォード――カーウィン――この三者が連結できるとなると、怖ろしい結論が生じてくる。青年が中有の世界から招き寄せたのはなんであったか? その物が彼になにをしたのか? この事件の真相は? アレンと称する人物の正体は? 彼はチャールズの心に疑念がきざしたとみて、その殺害をはかった。生命をねらわれたチャールズも、その最後の手紙の追伸で、この人物を殺し、酸を用いて、死体を完全に消激させねばならぬといった。いままた、知れぬミナスキュール文字の通信が、〈カーウィン〉を殺し、その死体を同様の方法で溶解せよ、と告げている。抹殺すべき相手の名が、アレンからカーウィンに変わった理由はなんであるのか? 最後の段階にいたって、なにかが起きたにちがいなかった。ウィレット医師のもとに、狂気めいたチャールズの手紙が届いた日、この青年は落ち着かぬ様子で、午前いっぱいの時間をすごし、その後、変化が生じた。人目を避けてこっそり邸をぬけ出したのに、帰宅のときはこれ見よがしに、警戒の任にあたる私立探偵たちのまえを通りすぎている。しかし、書斎にはいるや、恐怖の悲鳴をあげた。そこに、なにを発見したのか――あるいは、なにかが彼を発見したのか? チャールズが外出するところは、だれも見ていなかった。そうだとすれば、堂々と帰宅したチャールズは、彼の姿を借りた影でないのか? そしてその怖ろしい物が、慄えおののく者のうえに、一歩も書斎を離れなかった者の身に……? 執事もまた、異様な物音を聞いたというではないか?
 ウィレット医師は、ベルを鳴らして執劉芷欣醫生事を呼び、低い声で質問した。はい、それはもう、ひどい騒ぎでした、と執事は答えた。たいへんな物音で――叫び、喘ぎ、喉を絞められるような声、それにまた、叩きあい、足を踏み鳴らし……あまりの騒ぎに、駆けつけてみますと、チャールズさまがドアから出ておいでになりましたが、ひとこともおっしゃらず、人が変わったようなご様子でした。執事は語りながら身を震わせて、あけ放した二階の窓から吹きおろす重くるしい空気に、鼻をくすんくすんいわせていた。明らかに恐怖が邸を押し包んでいて、その重圧を感じとれぬのは、事情を知らぬ私立探偵三人だけと思われた。いや、彼らとしても、依頼を受けたこの調査の背後に、なにやら怪奇な事実がひそんでいることを漠然ながらも察しとって、とかく動作がためらいがちになるらしい。ウィレット医師は、深く、そしてすばやく、考慮をめぐらしていたが、その内容は、怪奇と恐怖にみちたものにちがいなかった。悪夢に似た出来事を、つぎつぎと追いながら、ときにまた、ぎょっとするような新事実に思いあたるのであろうか、呻き声をあげつづけるのだっ人民幣找換店た。
 やがて、ウォード氏が身振りで、会議は終了したと知ら
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