と考えたのも当然で
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と考えたのも当然で
これはぼくの推測だが、彼らが実際に水面から聳え立つのを見たのは、偉大なるクトゥルフが埋葬されている石柱を頂く城砦の上層部だったのではあるまいか。その下層に広がっているはずの壮大な都の規模を思いやるだけで、ぼくはこのまま死ぬのがましと考えたくらいだった。ヨハンセンと部下の海員たちが、水を滴《したた》らせている太古の悪霊たちの居城を眺めて、宇宙的な壮麗さに驚歎し、なんら前提的な知識を持ちあわさぬことから、これはとうてい地球のものではない、およそ現実に存在する惑星のものではあり得ぬ、あろう。緑がかった石造物の信じられぬほどの巨大さと、彫刻をほどこした石柱の目くるめくばかりの高さに畏怖を感じて、そして同時に、そこに見られる巨人像の顔かたちが、アラート号の聖骨箱から見出した奇怪な偶像と、あまりにも似かよっているのに驚いた様子が、ヨハンセン航海士の恐怖に怯えた記述の一行ごとに現われていた。
ヨハンセンに未来派絵画の知識があったとは思えぬが、彼がこの石の都について語るところは、あの流派の画家たちが企図したものにきわめて類似していた。事実、手記の記述は個々の石造物を具体的に描いてみせるかわりに、その角度と面との桁はずれの広大さに驚嘆した模様に終始していた。地球人の観念とはあまりにもかけ離れ、偶像と象形文字の奇異な印象とあいまって、この世のものとは信じられなかったという。ぼくが角度と面についての記述をとりあげたのは、その部分を読んでいて、ウィルコックス青年の夢を思い出した睫毛液からだ。若い彫刻家は怖ろしい夢を説明するにあたって、そこに現われた線と形が全部狂っており、われわれの世界のものとは別個の、非ユークリッド幾何学的な球体と次元を連想させられたと語った。そのような学識を欠いた船員たちにしても、この奇怪な現実を前にしたときには、まったく同じ印象を受けたものと思われる。
ヨハンセンと部下の海員は、巨大都市の堤防に上陸した。堤防と見たのは巨石を積みあげた城壁であり、傾斜がきついうえに滑りがちなので、これを梯子《はしご》としてよじ登るのは人間の能力を上まわっていた。海底から浮かびあがった倒錯の島であるのを示す瘴気《しょうき》が立ち昇り、それが偏光性を持つのであろうか、天空にかかる太陽の形も歪んで見えた。足場にしている積石も輪郭があいまいで、凹状と見た個所が次の瞬間には凸状に変わり、ねじくれた悪意がそこにひそ
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